4.我が国の“長寿”の中身

 言葉だけでは中々実感として持てないでしょうから、又、女子栄養大学から出版されている五訂『食品成分表』2001年度版の資料の中から抜粋し数字で表してみます。それは、わが国の年齢別の『死因順位及び死亡割合』です。総数では死因の第一位は悪性新生物(30.3%)ですが、心疾患(15.3%)、脳血管疾患(14.7%)、肺炎(8.5%)、不慮の事故(4.2%)と続き、三大生活習慣病だけで約60%を占めています。

 

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

0歳

先天異常

呼吸障害等

乳幼児突然死

不慮の事故

出血性障害等

1歳〜4歳

不慮の事故

先天異常

悪性新生物

肺   炎

心 疾 患

5歳〜9歳

不良の事故

悪性新生物

先天異常

肺   炎

良性新生物

10歳〜14歳

不慮の事故

悪性新生物

自   殺

心 疾 患

先天異常

15歳〜19歳

不慮の事故

自   殺

悪性新生物

心 疾 患

先天異常

20歳〜24歳

不慮の事故

自   殺

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

25歳〜29歳

自   殺

不慮の事故

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

30歳〜34歳

自   殺

悪性新生物

不慮の事故

心 疾 患

脳血管疾患

35歳〜39歳

悪性新生物

自   殺

不慮の事故

心 疾 患

脳血管疾患

40歳〜44歳

悪性新生物

自   殺

心 疾 患

脳血管疾患

不慮の事故

45歳〜49歳

悪性新生物

自   殺

心 疾 患

脳血管疾患

不慮の事故

50歳〜54歳

悪性新生物

自   殺

心 疾 患

脳血管疾患

不慮の事故

55歳〜59歳

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

自   殺

不慮の事故

60歳〜64歳

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

自   殺

不慮の事故

65歳〜69歳

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

肺   炎

不慮の事故

70歳〜74歳

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

肺   炎

不慮の事故

75歳〜79歳

悪性新生物

脳血管疾患

心 疾 患

肺   炎

不慮の事故

80歳〜84歳

悪性新生物

脳血管疾患

心 疾 患

肺   炎

不慮の事故

85歳〜89歳

脳血管疾患

心 疾 患

悪性新生物

肺   炎

老   衰

90歳以上

心 疾 患

脳血管疾患

肺   炎

老   衰

悪性新生物

65歳以上

悪性新生物

心 疾 患

脳血管疾患

肺   炎

不慮の事故

75歳以上

悪性新生物

脳血管疾患

心 疾 患

肺   炎

老   衰

80歳以上

脳血管疾患

心 疾 患

悪性新生物

肺   炎

老   衰

これをご覧になっても怖くなりませんか?

  最近、「ガン(=悪性新生物)等が増えてきたのは長生きするようになってきたからだ!」と言い切る専門家の方がいらっしゃいます。身体の中の不飽和脂肪酸活性酸素のために酸化され、過酸化脂質に変わります。それが身体のあちこちで悪戯をしたものがガン等の生活習慣病です。しかし、人間の身体の中には本来SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)やフラボノイドに代表されるその酸化を防ぐ働きをする酵素があるにはあるのですが、加齢と共にその働きは鈍ってきます。そのために年をとるとガン等の生活習慣病になると言うのです。
  しかし、もし加齢だけが原因であるとするならば5歳〜14歳までの悪性新生物による死亡者が第2位であることの説明が付かないのではないでしょうか? それとも、この年齢はもはやそれらの酵素の働きが弱まってしまう年齢だとでも言うのでしょうか? 又、エジプトやタイでは平均寿命は短いのですが、老衰死が一番多い(これを書いたのは1999年で、データ-は  年のものでした。この 年間でタイの事情はすっかり変わってしまったようです)のは何故なのでしょう? 国によって、地域によって死亡順位が異なるのは単に加齢だけがその原因ではないことを物語っているのではないでしょうか? 
  平均寿命が70歳〜80歳のこの時代に、早ければ5歳から、遅くても40歳代からガン等の生活習慣病の恐怖にさらされています。
本当の“長寿社会”であるならば健康のまま歳を取ることが出来、寝たきりにも痴呆症にもならず、天寿を真っ当出来るはずではないでしょうか? 我が国の高い平均寿命が医学の進歩の恩恵によって支えられていることは間違いの無い事実です。こんなに医学が進んでいなかった時代であれば一度に多くの生命を失っていた感染症や疫病がほぼ無くなり、飢餓も戦争も無い我が国ですから、平均寿命が上がるのは当然と言えば当然です(でも、「大震災」が起こり、一度に多くの人が無くなれば翌年の平均寿命は下がります。実際、「阪神大震災」の翌年の平均寿命は下がりました)。10人生まれた子供のうち8人が感染症で亡くなってしまう南米のジャングルに住む原住民の人達の平均寿命は極端に低くなるのも当然と言えば当然です。
“平均寿命”にはその中身(=どう生きているか)は関係ないのです。
  本当に多くの人達が“健康”であるならば、これほど健康雑誌や健康食品が氾濫しないのではないでしょうか? みのもんたさんの番組の視聴率がこれほど良くはならないのではないでしょうか? 多くの人達が健康に不安があるからこそ、それらのものが売れ、番組も成り立っているのではないでしょうか? しかし、残念なことに、それらは売らんが為の商品であり、視聴率を上げるための番組づくりになっていますので、
内容よりもインパクトが重要視され読者の関心や欲求を満たす方向(安い・手軽・簡単)で展開してしまいます。それを1つ1つ真に受けていては振り回されるだけです。健康に生きていくためには王道(=近道)はありません。あるとしたら「長い道程を一歩一歩確実に歩んでいくこと」だけが唯一の王道だと思います。

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