アレルギーっ子の生活

<05-13      2001年10月23日(火)公開>

【予防接種と水銀(チメロサール)】

 2001年、三種混合や日本脳炎ワクチンに保存剤として1ml中0.1mg(100μg)程度使われていたチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)の含有量が約10分の1になりました。予防接種1回では0.1〜1.0ml程度使われますから1回10〜100μg注射されていたものが、1〜10μgになったわけです。チメロサールは有機水銀化合物であり、有機水銀化合物は神経系に蓄積され障害を起こすことが水俣などの公害で分かっています。これを極力減量すべく今回の改定になったようです。将来的には0に近くなるものと思われます。

 アメリカにおいて魚のメチル水銀汚染はサメ0.3〜3.52ppm、メカジキ0.36〜1.68ppm、マグロ ND(検出不可能) 〜 0.76ppm、オヒョウ0.12〜0.63ppmです。カニではND〜0.27ppm、タラでもND〜0.17ppmの汚染があります。カツオやマグロなど魚のメチル水銀汚染が1ppmとすると、魚10g食べれば10μgのメチル水銀(予防接種1回分1ml)を摂取してしまいます。

 アメリカでは水銀暴露による小児への影響を考慮して制度が新しくなり、1回の有機水銀量は0.3μg以下とされており、まもなくすべての予防接種が、チメロサール低濃度または含まれないものに変わる予定です。日本も早くチメロサールが予防接種製剤に含まれなくなることを期待しています。

 中枢神経系統は2歳まで発達することを考えると、2歳前に有機水銀を注射することは避けたいと考えます。チメロサールを含む不活化ワクチンは、重症化する可能性がある乳児の百日咳を予防するために三種混合を2歳前に2回(最低2回接種すれば予防効果が出ます)。3回目以降は満2歳以後にする(最初の3回は、きっちり8週以内ごとにしなくても、小学校に入る前に4回終わっていれば効果が期待できます)。BCGは乳児期早めに、1歳になったら早めに麻疹を、ポリオは時期をみて受け、水痘は本物を1歳以後にやってしまうか、予防接種をします(接種しても水痘にはかかるかもしれませんが、軽くなります)。残り、風疹、おたふくは、無料券のぎりぎりの90ヵ月直前にやればよいでしょう。発生状況に応じて日本脳炎を、ただし、流行がない地域では2歳以後にします。

 インフルエンザは相当なことがなければ見送ります。乳児期からインフ予防接種を毎年すると、三種混合2回〜3回(1回0.5ml)、インフルエンザ予防接種1歳前2回(1回0.1ml)に、1歳で2回(1回0.2ml)計4回、合わせて6回、つまり最低の接種スケジュールより多くの有機水銀化合物を注射することになってしまいます。

厚生労働省HPよりチメロサールを含む製剤

 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0330-1a.html

医薬品・医療用具等安全性情報(Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.165)
43 〈ワクチン類,毒素及びトキソイド類,混合生物学的製剤〉
 インフルエンザHAワクチン,日本脳炎ワクチン,組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来),組換え沈降B型肝炎ワクチン(CHO卵巣細胞由来),沈降B型肝炎ワクチン(huGK−14細胞由来),沈降破傷風トキソイド,成人用沈降ジフテリアトキソイド,沈降はぶトキソイド,沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン,沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド

販 売 名 ビケンHA(阪大微研),インフルエンザHAワクチン(化血研)他
日本脳炎ワクチン(化血研)他
γ−HBワクチン「シオノギ」(塩野義),ビームゲン(化血研),ヘプタバックス−II(万有)他
γ−HBワクチン「ミツビシ」(東京三菱)
沈降B型肝炎ワクチン(明治乳業)
沈降破傷風トキソイド“化血研”(化血研)他
成人用沈降ジフテリアトキソイド(阪大微研)
沈降はぶトキソイド(千葉血清)
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(化血研)他
沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(化血研)他
重要な基本的注意 本剤は添加物としてチメロサール(水銀化合物)を含有している。チメロサール含有製剤の投与(接種)により,過敏症(発熱,発疹,蕁麻疹,紅斑,そう痒等)があらわれたとの報告があるので,問診を十分に行い,接種後は観察を十分に行うこと。

                                         −平成13年(2001年)3月厚生労働省医薬局−

 インフルエンザの予防接種は、現在のものはまだ有効性と副作用の関係がはっきりしていませんので、当院ではまだ接種を行っていません。現状では一回インフルエンザにきちんとかかれば、その後5〜6年は症状が軽くなりますので、1回目をなんとか乗り切ることが大切―と患者さんには話しています。当院以外では、アレルギーっ子の家族と主治医の必要性の感じ方で接種するかどうかが変わりますので、本ではあまり深く言及していません。過去に接種が減った理由(脊髄のアレルギー性疾患の発症など)が理解・改善されないまま接種をするように宣伝されていますが、疑問です。新しいタイプの予防接種(生ワクチン)が使えるようになることを期待しています。

関連記事:角田先生のHP「アレルギーっ子の生活」内『予防注射と有機水銀(チロメサール)
       AERA(01.11.25 50)−マグロで水銀中毒 米国で「水俣」問題−魚の水銀汚染で中毒患者が続々−

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