朝日新聞・日曜版−2001年(平成13年)9月30日(日曜日)

ともに歩む  学習障害(LD)
障害は「個性」活躍の場を

 中学生のA君は歴史が好きで得意だ。でも、国語の読み書きはとても苦手。聞いて理解できるが、教科書や黒板の字を読んでそうすることができない。
 記憶力はいいのに、筋道だてて物事を考えたり、伝えたりすることにも苦労する。家族によると、幼いころから大きな音に過敏に反応し、言葉を覚えるのが極端に遅かったという。
 A君は「学習障害」(英語の頭文字でLD)を抱えるひとりだ。
 LD児は全般的な知能の発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、計算する、推論するなどの能力のうち、特定の能力を身につけることが難しい。遊びやスポーツのルールが理解できず、集団生活になじめないことも少なくない。
 障害が外見からは分かりにくいため、「自分勝手」「わがまま」「やっかいな子」と放置されたり、いじめられたりしがちだ。
 中枢神経に何らかの機能障害があると考えられているが、詳しい原因などはまだ分かっていない。家族関係など環境的な要因が直接的な原因になることはない、と考えられている。
 そんな子どもたちの親の会「全国LD(学習障害)親の会」が発足したのは90年。いまでは43都道府県に約3千人の会員がいる。各地でシンポジウムを開いたり、「理解の手引き」を発行したりしてきた。
 10年余りの間に、幼かった子どもの一部は成人年齢に達した。会の熱心な運動は国を動かし、文部科学省が実態調査を進め、支援対策を検討し始めている。
 それでも、就職や社会参加への理解や支援策はまだ十分とはいえない。会の事務局スタッフはいう。「友人だけでなく、親、教師からも理解されず、引きこもりや不登校になることも少なくない。障害は『個性』なんだということを多くの人にわかって欲しい」
 LDにくわしい東京学芸大学の上野一彦教捏(臨床心理学)は「障害の程度、状態から知的レベルまでとても多様なため、親や教師も理解できないことがある。診断にとらわれ過ぎずに周囲の理解を深め、学校だけでなく、社会で活躍できる環境づくりが必要だ」と話す。

全国LD親の会
 〒162−0823 東京都新宿区神楽河岸1の1 東京ボランティア市民活動センター気付
                 http://www.normanet.ne.jp/~zenkokld/
 機関誌「かげはし」を発行し、各地域の「親の会」と情報を交換する。問い合わせは、返信用封筒に80円切手をはり、封書で。

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