毎日新聞-2001年(平成13年)05月19日(土)

女の気持ち

「母の入院」

 最近、私の命は、母からもらったんだなあと、しみじみ思っています。母の入院がきっかけでした。母は昨年末、自宅で急に強い体のしびれを訴え、救急車で運ばれました。弟と私が付き添い、後から妹と父も病院に駆け付けて来ました。つらそうにしている母を、私はどうすることもできず、「このまま一生、治らなかったら」と不安でたまらなくなりました。
 原因は母の病気からでした。42歳の母は私たちを産む前、腫ようができたため、甲状せんを全摘出したことを救急車の中で知りました。ホルモンのバランスが崩れたことに過労が重なったとのことです。翌日、母は退院しましたが、普段は元気で明るい母の信じられない一面に、強い衝撃を受けました。
 今は元気になりました。でも、あのことがあってから、母のことを前と同じように見られなくなりました。あの時、抱きかかえて初めて知った細い腕。私より小さな手。それまで気付かなかった弱々しい母。その腕で毎日、家族5人分の洗濯物を干していたなんて。
 それでも普段から手伝いをする妹と違い、私は心の中で思うだけで、「大丈夫? 私がやるよ」とうまく言えません。「口に出して言わないと伝わらないことがある」と母も私によく言っているなあ……。今日は私が夕食の後片づけをしようと思います。
                                               千葉県成東町   大森朋美  高校生・15歳 

2001年05月のニュースのindexページに戻る