毎日新聞-2001年(平成13年)05月19日(土)

虐待相談、年間1万7000件
親権喪失申し立ても急増  昨年度、児童相談所

 00年度中に全国の児童相談所に寄せられた虐待の相談が1万7000件を突破し、初めて1万件を超えた99年度の1・5倍に増えていることが18日、毎日新聞の全国調査で分かった。虐待を繰り返す親に対し、児童相談所長が家庭裁判所に親権喪失を申し立てたケースは前年の1件から19件に増加した。相談所の運営費や職員を大幅に増強した自治体もあるが、多くは貧弱な態勢で、激増する相談に対応しきれない実情が浮かんだ。
貧弱な自治体対応 本社調査

 相談件数は90年度は1011件だったが、95年ごろから急激に増え始め、99年度は1万1925件。00年度は1万7689件(暫定知)だが、未集計の自治体もあり、さらに増える見込みだ。相談所による家庭への立ち入り調査は99年度の42件から00年度は99件に増加し、親権喪失の請求は98年9件、99年1件に比べ、19件と大幅に増えた。
 親権喪失は、親族や検察官、児童相談所長の申し立てを受けて、家裁が児童保護の点から引き離すことが必要などと判断した際に宣告する。虐待から児童を救うため活用を求める声が出ていた。
 また、職員数では、毎日新聞の取材に回答のあった46都道府県と11政令市のうち、青森県が児童福祉司を昨年度の32人から今年度は55人、宮城県が8人から21人に増員した一方、計28自治体(23都県・5政令市)は増員なしか1人増だけにとどまった。
 国は人口170万人あたり17人の児童福祉司を置くことを地方交付税の算定基準としていたが、00年度は都道府県と政令市の中で計20都県・2政令市がこの基準を満たしておらず、多くが事実上交付された税金を目的外転用していた。今年度は算定基準が19人に引き上げられたため、基準に達しない自治体は24都県・3政令市に増えた。
 また、01年度の児童虐待対策費を調べたところ、横浜市は1503万円で前年度(315万円)の5倍、北海道は5889万円で前年度の8倍強を計上した。しかし、10%前後の増額にとどまる自治体が多く、中には「虐待対策」名目の予算を増額する一方、児童福祉全体の予算を減額する自治体もあった。                                  【児童虐待取材班】

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