毎日新聞−2001年(平成13年)05月18日(金)

社説

小泉人気
「質すべきを質すのが野党だ」

 小泉純一郎首相の圧倒的人気は相変わらずだ。所信表明演説を放送したNHKの「国会中継」(7日)は6.4%と従来の3〜4%を大きく上回っていた。また衆院予算委の中継は、最高7.6%を記録、同じ時間帯の民放各局をしのいでいた。(ビデオリサーチ・関東地区) テレビのワイドショーにも頻繁に取り上げられ、茶の間の話題となっている。5月第2週の在京3局でのワイドショーでは、東京・浅草の女子短大生殺人事件の容疑者逮捕に続いて、政治ものが2位にランクされた。(TBS・「ブロードキャスター」調査)
 政治への関心の高さは、政治不信解消のためにも歓迎すべきことだ。質問に立った民主党の菅直人幹事長や自由党の達増拓也氏のもとにはメールや電話が殺到している。問題はその内容だ。
 質問者を大半は誹謗中傷している。矢面にたった小泉首相や田中真紀子外相を擁護しようとするあまり、「単細胞」、「死ね」、「山猿」など、度を越した言葉を羅列したものもある。民主国家としては恥ずかしい限りだ。
 小泉首相が8割を超える支持率を獲得した要因の一つは、構造改革を掲げ、真正面から「古い自民党」を否定している点だ。この姿勢は、野党支持者からも共感を呼んでいる。
 「変人」と呼ばれ、「永田町的体質」を感じさせないキャラクターも、大衆的人気に拍車をかけている。答弁も、「郵政大臣の時は出来なかったことも首相なら出来ることもある」、「いままで多数でなかったものを多数に変える」と普通言葉で語りかける。テレビ向けパフォーマンスが受けている。
 半面、「私より詳しい人がいる」と、さらりと答弁を回避した。「まだひと月しかたっていない。これから変えていくのだ」、「方針が大事。中身はみんなで考える」と、改革の内容には一向に踏み込まない。田中外相も「事務方から聞いていないので答えられない」と、実質上の答弁拒否に出たこともあった。
 野党は総じて圧倒的な人気の小泉政権と真っ向からぶつかり合うことは良策でない、と判断している。昨年の総選挙では改革を旗印に党勢を拡大した民主党にはこうした傾向が強い。このため、論戦も「小泉改革」を是認した上で、その実現が不可能ならば、政権交代を迫る二段構えだ。
 迫力には欠けるが衆院で野党が取り上げた論点は、国民の関心事をほぼ網羅している。今後の日本のあり方がより鮮明になるよう、週明けの参院予算委でも質(タダ)すべきは質してもらいたい。政党として当然で、だからこそ言論の府であるはずだ。小泉人気を背景に反対論を封じ込めるのは間違いで、ひいきの引き倒しだ。
 「私はあなたの言うことに反対だ。しかし、あなたが言う権利は死を賭して守ろう
 質問者に度を過ぎた言葉を浴びせた人々には、この民主主義の神髄を示す名言をもって反論し、猛省を求める。

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