読売新聞−2001年(平成13年)05月15日(火)

気流

「心配りのできる校長先生に期待」  無職 木暮登美子 69  (群馬県勢多郡)

 玄関のチャイムが鳴り、出てみると、小柄で優しそうな男性が立っていました。「今度、ここの小学校に赴任してきました校長の○○です。今日は新入学児童の交通指導をしてのおりまして、ご近所をお騒がせして申し訳ございません」と、ご丁寧にあいさつに見えたのです。
 さらに、「夏になりますと、プールでスピーカーなどを使いますので、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」と言われました。校長先生と一緒に通りに出てみると、子供たちが手を振り、校長先生も「気を付けてね」と手を振り返していました。
 ふと、数年前の出来事を思い出しました。私が自宅の外に取り付けたカーブミラーに、児童がよじ登って向きを変えているのを見つけ、学校に連絡しましたが、おわびの言葉もありません。再度、電話しても、当時の校長先生からは「どうしろと言うのですか?」という言葉が返ってきました。
 今度、赴任された校長先生から教育を受ける子供たちは、幸せだなと思いました。

「経験者の一言で、育児の不安軽減」  イラストレーター 栗原 裕孝 38  (東京都西多摩郡)

 他人の言葉に必要以上に傷ついたり、自分のしていることが「虐待」ではないかと不安に思えたりして、子育てに自信を持てない母親が多いようだ。
 人の命を育てるという、人生で初めての大仕事を前に、不安に思わないはずはないが、昔は、自分の親や親せき、隣近所の人たちが、そうした不安を和らげてくれていたのだろう。
 現代は核家族化が進み、母と子の「密室育児」になっている。本やテレビなどで育児に関する情報は多く出回っているようだが、それらはあまり若い母親の助けにはなっていないように思える。
 やはり、本やテレビの情報より、育児を経験した人から直接耳にする、血の通った一言の方が、母親にとってはどれだけ心強いことか。赤ちゃんのおでこに触り、「これくらいの熱なら、慌てなくても大丈夫」と言ってくれる人が近くにいてくれるだけで、不安は和らいでいくはずだ。
 さほど必要のない情報がはんらんする一方で、本当に大切なことがなかなか伝わらない、複雑な社会になってしまった。

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