毎日新聞−2001年(平成13年)04月17日(火)

滋養たっぷり物語−B− 「ヨーグルト」
長寿説で世界中に

 ヨーグルトの歴史は非常に古く、牧畜民族が哺乳動物を家畜化した有史以前からはじまっていた。そのヨーグルトが一躍有名になって、世界中で食べられるようになったのは、実は近年のことである。ロシアの生理学者でノーベル医学・生理学賞を受賞したT・メチニコフが、ブルガリアを中心としたバルカン半島に長寿者が多いのは、ヨーグルトの日常摂取によるという説を唱えたのがきっかけであった。
 この不老長寿説により、ヨーグルトは欧米諸国で広く造られるようになり、今日では全地球的食べ物に発展した。なによりも製法が簡単なので爆発的な普及になったのである。
 牛乳または脱脂粉乳にショ糖、硬化剤(寒天やゼラチン)などを混合して溶解し、加熱溶解してからそれに純粋培養した乳酸菌を加え、生育しやすい温度で発酵させると出来上がりである。硬化剤を加えたヨーグルトハードヨーグルトショ糖も硬化剤も加えないで牛乳だけで造るものプレーンヨーグルトという。乳酸発酵が終わって凝固化したものを砕き、半流動状にしたものソフトヨーグルトで、最近では液状ドリンクヨーグルトや、アイスクリーム状に凍結したフローズンヨーグルトなどが市場に出まわっているのはご存じの通りである。

 そのヨーグルトの効用については近年、著しい研究が展開され、現在では次のようなことがわかっている。まず第一に原料の牛乳に由来する良質のタンパク質が豊富な上に、発酵されることで消化吸収は抜群によくなっていること、ビタミンB2(成長の促進)、葉酸(ビタミンMと呼ばれる造血因子)が顕著に多いことといった滋養効果があげられる。このほか、乳糖不耐性症(いわゆる牛乳を飲むとお腹がゴロゴロとなり便がゆるむなどの症状)の防止▽ガン抑制効果(免疫賦活作用)▽発酵中に乳酸菌が生成したペプチドという物質が生体機能(例えば肝機能)を強化しているという報告▽血中コレステロール排除効果……などが報告されている。そして何といってもヨーグルトから何百億個、何千億個という大量の乳酸菌が体内に取り入れられた場合の、有害腸内細菌の体外排除や整腸作用効果は最も知られたところである。
 原料乳を乳酸菌という発酵微生物で発酵させただけで、これだけの効果が付与されるのであるから、「発酵」という神秘な現象には驚かされる。
                                                         (東京農大数授)

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