毎日新聞−2001年(平成13年)04月16日(月)

尼崎の小6 通院……すれ違う母心
 「お母さんがよく怒る。お母さんのために転向したのに」

 兵庫県尼崎市の11歳の小6男児が母親を包丁で刺して死亡させた事件は、発生翌日の15日も関係者の間で衝撃が広がった。「元気いっばいのわんばく少年」と、小学校のPTA役員も務めた「明るく、しっかりした母親」。周りには幸せそうに見えた家族が突然、内側から崩壊した。母親の病気、引っ越し、子供の転校。どの家庭でも起こりうる出来事をきっかけに、親子の思いはすれ違ったのか。
 少年は、やんちゃなといわれていたが、表向きの顔とは違う一面もあった。母親が入院中、同級生に漏らした言葉は「お母さんは入院しているし、お姉ちゃんは勉強で忙しいから寂しい……」。
 母親の病気は退院後も通院が欠かせないことから、一家は昨年12月、数`離れた病院の近くに引っ越した。転居後も校区外から通学していた男児は、この4月に新しい学校に移った。仲の良い友達には「転校したくない」と本音を漏らしていた。
 男児は新学期が始まった後も、元同級生に「前の学校の方が良かった」とこぼし、「お母さんがよく怒る。お母さんの病気のために転校したのに……」と打ち明けていた。
 一方の母親は「やんちゃですぐけんかするし、手を焼いている」と周囲に語りながらも、病気の体を押して、厳しく「しつけ」をしていたようだ。「母の思い」は、子どもに通じないまま悲劇の結末を迎えた。

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