読売新聞−2001年(平成13年)04月08日(日曜日)

来信返信−反響を追う−自転車のマナー

       
「歩行者いたわる心で」

歩道での事故が事故が大幅に増加自転車と歩行者の事故の死傷者 カッコ内は死者数。交通事故総合分析センターの資料から

 歩道を走る自転車のマナーの悪さを嘆く投書が多く寄せられています。「幅一bほどの歩道で、後ろから走ってきた自転車が急に腕にぶつかってきて、とても痛い思いをしました」(埼玉県の45歳主婦)など、自転車と歩行者の事故も増え、昨年の死傷者は約1,600人に上ります(グラフ参照)。その要因には、自転車に関するルールが意外に知られていないこともあるようです。
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 自転車の基本的なルールをクイズにしました。以下の三問にイエスかノーで答えてみて下さい。
Q1 次の標識の出ていない歩道でも、自転車に乗って走ることができる?
Q2 歩行者の通行を妨害すると、「罰金」の対象となる?
Q3 横断歩道は自転車に乗ったまま渡ってもいい?

 頭に入れておきたいのは、自転車は道路交通法では「軽車両」とされ、原則として車道を走る乗り物だということです。Q1の答えは、「ノー」です。通交法63条には、自転車は「道路標識等により『通行可』とされている歩道を通行することができる」とあり、「通行可」を示す上の標識の出ていない歩道は、自転車は走れません。
 Q2は、「イエス」です。自転車が通行できる歩道でも、自転車には@歩道中央から車道寄りを通行するA通行中は徐行するB歩行者を妨害しそうな時は一時停止する―などの制約があり、歩行者の通行を妨害すると、同63条の「二万円以下の罰金又は科料」の規定が適用されます。
 次に、横断歩道はあくまで歩行者のためにあるので、Q3は「ノー」。自転車専用の横断帯がない時は、手で押して下さい。
 自転車協会東京事務所の川口豊勝所長は「常に、歩行者優先を意識するだけでも、かなりトラブルは減るはず」と話します。
 ただし、こうしたルールが守りにくい道路構造になっているという現実も見逃せません。
 車道は自転車にとって危険が多いのに、道交法で自転車が通行できないことになっている歩道は、全国の歩道(総延長約19万9,000`)のほぼ半分を占めていることもその一つです。
 初めて、自転車が通行できる歩道が生まれたのは1970年。車道で起きる自転車事故による死者が2,000人を超えたためで、その後、死者は減りましたが、現在も年間1,000人前後に上っています。
 このように、自転車が車道も歩道も伸び伸びと走れないという問題は、「日本の道路行政では、自転車の存在が考えられてこなかったため」と国土交通省道路局の担当者も認めます。
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 国内では現在、約8,400万台の自転車が走っています。国士交通省ではようやく、主要道路に「自転車道」の設置を義務付けるなどの検討を始めましたが、自転車道づ<りには、従来の車道を狭めることも必要になるなど、国民のコンセンサスが必要になります。自転車をめぐる交通ルールと道路構造の改善は今後、ともに考えていかなければならないテーマでしょう。 
                                                        (湯本浩司)

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