毎日新聞−2000年(平成12年)10月27日(金)

経済

予想外の大量店舗閉鎖

 国民負担拡大「そごう再生計画案」    法人・個人 顧客離れ激しく

 そごうが25日に東京地裁に提出した再生計画案で、預金保険機構が抱えるそごう向け債権の損失額(国民負担額)が、最低1300億円を超える見通しとなった。とん挫した「債権放棄計画」では970億円という説明だった。なぜ、国民負担はこんなに大きくなったのだろうか。                                              【三島 健二】

Q 預保機構の実際の損失はどれくらいになる?
A 存続する13店向けの債権が約980億円で、このうち670億円が損失になる。さらに閉鎖する9店などに約1000億円の債権がある。このうち、一応担保のあるのが約300億円、無担保のものが約700億円だ。清算が前提だから、無担保分の回収はほとんど無理で、担保のある分も全額回収は見込めない。
 つまり、存続13店以外での損失は確実に700億円を超し、合計1370億円以上になる見通しだ。

Q 見通しなの? 確定はしていないんだ。
A 最終的に確定するのは、閉鎖店が営業をやめた後の来年1月末だろう。

Q 国は確か試算で、もっと少ない額を示していなかったかな。
A 国(金融再生委員会)は、債権放棄計画ならば970億円にとどまる国民負担が、会社更生法なら1230億円、破産法なら1430億円まで拡大するという試算だった。

Q それよりも大きくなるのは、なぜ?
A 今回は民事再生法という別の法律だけど、会社更生法での試算は「全店の存続」が前提だった。そごうが東京店も含め10店も閉鎖するとは、想定しておらず、結局、全店閉鎖の破産法の試算に近づくことになった。消費者・法人顧客のそごう離れが、それだけ激しかったということだ。

Q 納得できないな。預保機構が優先回収できるとか、国民負担を減らす方法はないの?
A 「私的な会社整理」の債権放棄計画では、優遇しようとした。でも、「法的な整理」に入ったことで、できなくなった。法はすべての債権者を平等に扱うからね。25日の会見でそごう代理人弁護士は「預保機構といえども計画案では優遇できない」と述べている。

Q 預保機構が再生計画案に同意しなかったら、どうなる。
A 再生計画案が「案」じゃなくて、承認された正式の計画になるには債権者の半分以上の同意が必要になる。預保機構だけが、反対しても計画は実行に移されるが、影響力は大きい。再生委と預保機構は、国会や世論の動向も見定めた上で、結論を出すことになるだろう。ただ、もめると今度は存続するそごうがバッシングを受け、再生自体が危うくなるかもしれないね。



解説 そごう向け債権と預金保険機構
4月のそごうの債権放棄要請に伴い、旧日本長期信用銀行(現新生銀行)も970億円の放棄を求められたが、国との特約に基づき、預保機構に買い取りを要請。約2000億円の債権とともに、約1000億円の引当金(損失への備え)も引き継いだ。この引当金も、公的資金で積んだもの。

 

いっぽのコメント
 
いつもながら呆れる話しだ。中小・零細企業の経営が苦しくなっても知らん顔しているのに、大企業だと国民の税金を使ってまで(それも将来の)助けようとする。それまでは散々儲けて、贅沢をしてきただろうに。後で会長さんの退職金は支払われないようになったとか。それも予定では4億円で、給料も毎月7000万円だったことを知った。そんな人達の生活はそのままで、その人達の“ツケ”だけを国民に負担を負わせようとはふざけた考えだ。
 経済評論家と呼ばれる人達も「我が国の経済を安定させるためには必要なこと」とは言っている人が多いようだが、国民の税金はもっと国民の生活に直結することに使って欲しいものだ。 

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