読売新聞−2000年(平成12年)10月16日(月)

からだ物語  「更年期」で力み消えた

   落合 恵子さん 55  (作家)

48歳の時、体中にじんましん、痒みが出て、多くの医師を巡った。

 痒くたまらず、特に疲れてくる夕方以降がひどかった。寝ている時に、つめを立ててかいてしまい、ひじ、ひざの裏などに血がにじむほどでした。
 だるい日が続き、友人からは「そろそろ更年期障害なんじゃないの」なんて言われて。医師からも同じことを言われましたが、納得できる説明はなかった。
 私たちの年代は、体調が悪くなって検査でもはっきりしないと、すぐ「更年期」と片づけられてしまう。もう「女性じゃなくなった」と思われたり。

 そんな時、ここ10年の肝機能の検査値を見ていたら、少し数値が高くなっているのに気づきました。ただの更年期障害ではないと感じ、医学蓄を何十冊も読みあさりました。
 信頼できそうな医師を見つけ、「あなたの診察を受けたい」と申し込んだ。
 やっと「胆汁の流れが悪くなったことが原因」と診断がつき、長いトンネルから抜け出た気分でした。病気自体は投薬だけで治りました。

 本当の更年期と言える症状が出てきたのは、ここ2、3年。講演などで緊張した時、わっと汗をかくぐらいで、思ったより軽かったですね。
 更年期になっても、外で働く女性は特に、自分が弱いと思われるのを嫌がって、症状を隠してしまう。自分の価値が下がるわけではないのに。
 私は更年期のおかげで、不自然な力みがなくなりました。強い、元気という若さのイメージから解放されるって、気分がいい。弱い所も含めて全部「私」と認めたい。私は「光年期」「幸年期」って呼んでるんですよ。

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