毎日新聞−2000年(平成12年)10月11日(水)

ドナー家族の気持ち理解して

臓器提供者の家族の会を設立した 佐竹俊二さん

 「『お父さんも何か、人の役に立つことをしなよ』。天国にいる息子から、そんな風に言われてるような気がしましてね」

 臓器提供者(ドナー)の家族団体「日本ドナー家族クラブ」を先月、同じ立場の二人と設立した。

 オーストラリアに留学していた長男の俊和君(当時23歳)が、1991年12月、シドニー郊外で交通事故に遭った。妻と長女の三人で渡豪したが、意識不明の重体。事故から8日目に脳死状態に陥った。

 現地では、脳死は人の死。臓器提供の意思の有無を聞かれ、号泣しながらホテルに戻って考えた。生前の俊和君は、いつも他人のことを思いやっていた。臓器移植のテレビ番組を見ながら、「僕は提供するよ」と語っていた。

 「提供しないと、きっと俊和が怒るよね」。三人全負で提供を決意した。

 それから9年近くがたち、日本でも脳死からの臓器移植は定着しつつある。しかし、注目されるのは、いつも、移植患者だけ。社会から置き去りにされてしまい、臓器提供を後悔し始めるドナー家族もいるという。

 「自分の命も他人の命も大事だということを、家族で話し合っていなければ、臓器提供はできません。ドナーなしには移植医療は成立しない。そのことを、社会がもう少し理解してくれるといいのでずが……

 クラブでは、ドナー家族同士の交流を深めながら、命の尊さを訴えていく。

                                                               科学部 中島 達雄

 子どもに先立たれることくらい親にとって辛いものは無い。しかし、その現実を受け止め、親の希望や悲しみより、子の望みや人生を優先してドナーとして臓器を提供される家族の方々には本当に頭が下がる思いです。「ドナー無しには移植医療は成立しない」と佐竹さんはおっしゃる。しかし、ドナーの意志を尊重する家族の方々の理解と協力が無ければその実行も叶わない。臓器をいただいて生きられる人達は、提供して下さった方に感謝しながら生きていくとは思うが、残された家族が納得出来る・満足できるような制度に、それを支えられる社会になって欲しいと思う。

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