読売新聞(岩手県版)−2000年(平成12年)10月02日(月)

家庭と暮らし
生活論点for21

米飯のすすめ 一日一回は食べよう

                                  畑江敬子さん お茶の水女子大学教授(調理学)

コンビニおにぎりでもいい   豆腐・海藻と組み合わせて

 食卓から米飯が少しずつ後退し始めて久しい。長年、米の調理法などの研究をしてきたお茶の水女子大学教授の畑江敬子さんは「お米は不思議な魅力を持つ穀物。豆類や海藻とうまく組み合わせて、楽しんで食べましょう」と提案する。おいしい新米が出回る季節、たまには手をかけてなべで炊いてみるのもいい。                     (聞き手・京極 理恵)

 農林水産省の調査によると、日本人一人当たりの米の消費量は毎年減る一方で、1963年度は117kgだったが、35年後の98年度は65kgにまで減った。
 「日本人が食べる物の選択肢が増えたわけで、一概に嘆く必要はないと思います。でも、一日に一食は食べてほしい。日本で自給自足できる食糧ですから」

 米は脂質が少なく、エネルギー源となる炭水化物を含み、そしゃくが必要なので、消化、吸収が緩やかで太りにくい、など様々な利点が知られている。

お茶の水女子大学教授 畑江敬子さん 「どんなおかずとも合う主食です。特に豆類と組み合わせると、アミノ酸の比率が上がり、たんばく質が体内でうまく利用されるようになります。だから、こはんに、豆腐とわかめのみそ汁などは最適なんです。昔の人の知恵は学ぶことが多いですね」  お茶の水女子大調理学研究室では、米が炊飯される途中で糖が増える過程を明らかにし、今年、日本家政学会誌に発表した。それによると沸騰した水の中で、米が40度から60度になるあたりで、糖類の一種のブドウ糖の割合が100gあたり40mgから100mgに一挙に増える。これが、ごはんのほのかな「甘み」の正体だという。
 「おなべの中で、お米にこんなことが起きてるんだ、とわかってわくわくしました。いわば『眠っていた』お米が目を覚ますのが、こはんを炊くってことなんです」
 せっかくの新米の時期。なべを使った炊き方も改めて教わった。最近は電気炊飯器の性能もかなり向上したが、自ら手を掛けたこはんの味わいはまた格別だ。

 「好きなお米を500g、水で洗います。これに水(米の分量の1.5倍)を合わせて全体で1250gとし、30分置きます。実はこの間も、甘みが増えているんですよ。厚手で大きめのなべにかけて約10分で沸騰させたら、火を弱めて20分。火を止めて10分蒸らし、ふたをとって軽くかきまぜます」
 「火加減によっては、失敗してこがすかもね。たまには『実験』と思ってやってみるのもいいじゃないですか。自転車になべをくくりつけて日本や海外を回った教え子もいましたが、『世界どこにいっても、なべ一つで日本のご飯が食べられるのは幸せ』と笑ってました」

 「電車に乗って、ビルの立ち並ぶ都市部から離れ、農村部に入っていった時に、さあーっと広がる緑の水田風景、私はこれが大好きです。正月のお雑煮、ひな祭りのちらしずし、お彼岸のおはぎ、など、お米は日本の行事と切り離せない存在。水田はそれを思い起こさせてくれます」

 多忙な畑江さん自身、実は朝はパン食。夜にご飯を炊き、残ったごはんを冷凍し、昼は大学の研究室の電子レンジで解凍して食べる。

 「ごはんが敬遠されるのは、食べたいと思っても、米を洗って炊き上がるまで時間がかかり、すぐに食べられないことが理由の一つです。といって、家事の手間のために仕事を犠牲にすることはない。うちの卒業生にも『仕事は続けて』と言ってます。面倒な時はコンビニのおにぎりでもいいのです。これからは、炊飯時間を短くする方法なども検討すべきでしょう。何らかの形で日本の食とつながっていく気持ちがあればいいのではないでしょうか」

 卒業生の家庭の調査では、夕食にご飯を食べる人の割合は89%。朝と昼を含めれば全員が日に一度はご飯を口にしていました。安心しました。

★いっぽのコメント★
 申し訳ないですが、こうした先生には総合的に物事を見て、ご判断していただきたいと思います。
 「卒業生の家庭の調査では、夕食にご飯を食べる人の割合は89%。朝と昼を含めれば全員が日に一度はご飯を口にしていました。安心しました。」とは、何に安心されたのでしょうか? 
 現在、健康や子育てをはじめ数多くの社会問題が存在しています。その解決のためには“食環境”をはじめ様々な問題が指摘されています。「現状を肯定」しているところからは何も解決の道は見出せません。
 況してや、「忙しいからパン食」ではそこらのお母さんと一緒です。「米は脂質が少なく、エネルギー源となる炭水化物を含み、そしゃくが必要なので、消化、吸収が緩やかで太りにくい、など様々な利点が知られている」と言っていながら、「一日一食でも良いから」とは矛盾していないでしょうか? 専門家が大衆に迎合するような理論に終始してしまっては何のための研究なのか判らなくなります。本当に良いと思うなら「三食とも米飯を基本にして」くらい言うのが専門に研究している者の使命ではないのでしょうか。

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