毎日新聞−2000年(平成12年)10月01日(日)

免疫力の強弱 発ガンに差

埼玉県立ガンセンター研究所 「NK活性」を調査 3500人を11年間追跡

「低」は「高・中」の2倍     緑黄色野菜・運動で予防も

 生体の免疫力に関する指標の一つである「NK活性」が強い人と弱い人では、ガンになる率に2倍近くの差が出ることが、埼玉県立ガンセンター研究所の中地敬さん(ガン分子疫学)らの研究で分かった。
 埼玉県の一般住民約3500人を11年間追跡調査した結果で、4日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。免疫力の個人差と発ガンリスクとの関係を、一般人の追跡調査で実証したのは世界で初めてという。
 中地さんは「緑黄色野菜の摂取や適度な運動でNK活性を高めることがガン予防につながる」と話している。
                                                                    【高木 昭午】

 NK活性は、免疫をつかさどるリンパ球のうち、ナチュラルキラー(NK)細胞の働きの強さを表す。NK細胞は、ガン細胞や感染細胞などを殺す性質をもつことで知られる。

 中地さんたちは1986年に、埼玉県内の40〜80歳の男女約3500人から血夜中のNK細胞を採取。ガン細胞と混ぜて、そのNK細胞が何%のがん細胞を殺すかを調べ、各人のNK活性の強さを求めた。そして、調査に参加した人を97年まで追跡調査し、発ガンの有無を確かめた。

 NK活性の強さを「高」「中」「低」と三つのグループに分けて分析したところ、「高」と「中」のグループが、ガンにかかった率は、女性はいずれも2%、男性は各7%、6%だった。これに対し、「低」のグループは女性4%、男性9%と明らかに高かった。

 さらに年齢や喫煙、食生活などの影響を取り除くと、「低」グループの人は、「高」「中」グループに比べ、男性で約1.7倍、女性は約2倍、ガンになりやすいという結論が出た。調査対象者の中で男性の平均年齢が女性より高かったため、全体に男性の発ガン率が高くなっている。

 NK活性は、緑黄色野菜を多く食べること、適度な運動をすることで高くなるが、喫煙や肥満で低くなると言われ、生活習慣に影響されている。中地さんは「ガン予防のために生活習慣を改善した場合に、その降下の有無を調べる目安にNK活性を使える」と指摘している。

いっぽのコメント
 “NK(ナチュラルキラー)細胞”はアレルギーの勉強をしても出てくる言葉です。ここでも「アレルギーの治療はアレルギーに限ったことではなく、生活習慣病を予防するものとして考えていく必要がある」という私達の考えを肯定する結果となっている。
 生活習慣病になっても良い人は好き勝手に食べ、生活すれば良い。しかし、気をつけたい人、病気になりたくない人は気を付ける以外にはない。どちらも自分の判断だ。

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