環境ホルモン
(外因性内分泌攪乱化学物質)

定義:内分泌の主役である“ホルモン※”の作用を乱してしまう外界中の化学物質

※ホルモン:生殖関係、特に女性ホルモンに似た作用をしたり、女性ホルモンの作用をかき乱したり、あるいは男性ホルモンを抑制したりする。

歴史:『沈黙の春』
    『奪われし未来』(シーア・コルボーン他、1996年刊、97年邦訳刊、翔泳社)

異変例−野生動物

種類 品  種 場  所 現      象
鳥類 カモメやアジサシ 北アメリカ・五大湖周辺 生殖率低下、甲状腺異常、オスが両性の生殖器を持つ
ハクトウワシ 五大湖・フロリダ 減少
ヤマシギ、ミサゴ、ハイタカ 北アメリカ・イギリス 産卵数減少、卵の殻が薄く弱くなる
カモメ 南カリフォルニア オスがメス化、メス同士で巣を作る
魚介類 五大湖 サケ 甲状腺肥大、オスの2次性徴の欠如
フロリダ カダヤシ(メダカ目) メスがオス化
イギリス ニジマス 精巣などに発達異常
日本 巻貝イボニシ メスにオスの生殖器ができる
日本(東京・多摩川) オスで生殖器や精子の異常
爬虫類 フロリダ ワニ 激減、オスの8割にペニスの矮小化や精巣機能不全、卵の異常
哺乳類 五大湖 カワウソ・ミンク 激減
カナダ イルカ 激減
フロリダ ヒョウ 生殖器の異常、精子数の激少、異常精子、オスのメス化

異変例−ヒト
研 究 者 場   所 現     象
スキャべク博士(デンマーク) 20カ国、男性15,000人の調査 1940〜90年の半世紀で精子数が半減、精液量が25%減っていた
吉村泰典(慶応大学教授) 日本 70〜90年代の30年間で日本人男性の精子数が約1割減った
押尾茂(帝京大学講師) 日本 20代男性の精子数、精子の運動量が低下している

その他の「ヒト」の異変例
対 象 場所 現      象
女性 日本 子宮内膜症の増加、子宮ガン・乳がんの増加、不妊疾患の増加
男性 日本 精巣ガン・前立腺ガンの増加、男児の死産率の増加(下表参照)
男の赤ちゃん 欧米 尿道下裂・停留睾丸等の生殖器異常の増加

   
男児の死産率が増えている!
死産性比の年次推移(1869〜1996年)
「子どものからだと心 白書’98」 子どものからだと心・連絡会議


環境ホルモン作用があると疑われている化学物質
物質名 環境
調査
用途 我が国での使用状況
1.ダイオキシン類 (非意図的生産物)  
2.ポリ塩化ビフェニ-ル(PCB) 熱媒体、ノーカーボン紙、電気製品 72年生産中止
3.ポリ臭化ビフェニール(PBB) 難燃剤 使用中
4.ヘキサクロロベンゼン(HCB) 殺菌剤、有機合成原料 79年使用中止
5.ペンタクロロフェノール(PCP) 防腐剤、除草剤、殺菌剤 90年失効
6.2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸 除草剤 75年失効
7.2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 除草剤 使用中
8.アミトロール 除草剤、分散染料、樹脂の硬化剤 75年失効
9.アトラジン 除草剤 使用中
10.アラクロール 除草剤 使用中
11.シマジン 除草剤 使用中
12.ヘキサクロロシクロヘキサン
 (HCH)、エチルパラチオン
殺虫剤 71年失効
72年失効
13.カルバリル 殺虫剤 使用中
14.クロルデン 殺虫剤 68年失効
15.オキシクロルデン クロルデンの代謝物  
16.trans-ノナクロル 殺虫剤 ノナクロル未登録、ヘプタクロル72年失効
17.1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン 殺虫剤 80年失効
18.DDT 殺虫剤 71年失効
19.DDE and DDD 殺虫剤(DDTの代謝物) 未登録
20.ケルセン 殺ダニ剤 使用中
21.アルドリン 殺虫剤 75年失効
22.エンドリン 殺虫剤 75年失効
23.ディルドリン 殺虫剤 75年失効
24.エンドスルファン(ベンゾエピン) 殺虫剤 使用中
25.ヘプタクロル 殺虫剤 75年失効
26.ヘプタクロルエポキサイド ヘプタクロルの代謝物  
27.マラチオン 殺虫剤 使用中
28.メソミル 殺虫剤 使用中
29.ミトキシクロル 殺虫剤 60年失効
30.マイレックス 殺虫剤 未登録
31.ニトロフェン 除草剤 82年失効
32.トキサフェン 殺虫剤 未登録
33.トリプチルスズ 船底塗料、魚網の防腐剤 TBTO 90年禁止
他は97年生産中止
34.トリフェニルスズ 船底塗料、魚網の防腐剤 97年生産中止
35.トリフルラリン 除草剤 使用中
36.アルキルフェノール(C5からC9)
    ノニルフェノール
    4-オクチルフェノール



界面活性剤の原料/分解生成物
界面活性剤の原料/分解生成物
使用中
37.ビスフェノールA 樹脂の原料 使用中
38.フタル酸ジ-2-エチルヘキシル プラスティックの可塑剤 使用中
39.フタル酸ブチルベンジル プラスティックの可塑剤 使用中
40.フタル酸ジ-n-ブチル プラスティックの可塑剤 使用中
41.フタル酸ジシクロヘキシル プラスティックの可塑剤 使用中
42.フタル酸ジエチル プラスティックの可塑剤 使用中
43.ベンゾ(a)ピレン (非意図的生成物) 使用中
44.2,4-ジクロロフェノール 染料中間物 使用中
45.アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル プラスティックの可塑剤 使用中
46.ベンゾフェノン 医療品合成原料、保香剤等 使用中
47.4-ニトロトルエン 2,4ジニトロトルエンなどの中間物 使用中
48.オクタクロロスチレン   (有機塩素系化合物の副生成物)  
49.アルディカーブ   殺虫剤 未登録
50.ベノミル   殺菌剤 使用中
51.キーポン(クロルデコン)   殺虫剤 未登録
52.マンゼブ(マンコゼブ)   殺菌剤 使用中
53.マンネブ   殺菌剤 使用中
54.メチラム   殺菌剤 75年失効
55.メトリブシン   除草剤 使用中
56.シペルメトリン   殺虫剤 使用中
57.エスフェンバレレート   殺虫剤 使用中
58.フェンバレレート   殺虫剤 使用中
59.ペルメトリン   殺虫剤 使用中
60.ビンクロゾリン   殺菌剤 98年失効
61.ジネブ   殺菌剤 使用中
62.ジラム   殺菌剤 使用中
63.フタル酸ジペンチル     非生産
64.フタル酸ジヘキシル     非生産
65.フタル酸ジプロピル     非生産
66.スチレンの2および3量体   スチレン樹脂の未反応物 使用中
67.n-ブチルベンゼン   合成中間体、液晶製造用 使用中
※この他にカドミウム、鉛、水銀にも作用があると疑われている。
※環境調査の●は検出例があるもの、○は未検出。印がないのは未調査。
※失効、未登録は農薬取締法に基づく。
                     (環境庁「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」を基に一部加筆して作成)

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