アレルギーっ子の生活

<07-20      2001年12月22日(土)公開>

【生まれてから1歳までの免疫と病気】

 赤ちゃんは母親のおなかの中にいる間に、母親の免疫力(抵抗力)を、胎盤を介してもらいます。生まれた後、母乳に含まれる免疫グロブリンが腸の粘膜に広がり病原体の侵入を防ぎ(IgA)、赤ちゃんの腸粘膜から吸収され(IgG)、赤ちゃんの体内に広がって病気を起こしにくい状態をつくりあげます。そのため、母乳を充分飲んでいる赤ちゃんは、生まれてからしばらくの間は病気にかかりにくくなっています。例えば、麻疹、風疹やおたふく風邪などには生まれてから6ヵ月ぐらいまではかかりません(ただし、母親がすでにこれらの病気に感染して抵抗力を持っているか、予防接種をして免疫を持っていればの話です)。この力は徐々に衰え、赤ちゃん自身が抵抗力を作り上げなければいけなくなります。つまり、様々なウイルスや病原体に感染するか、予防接種をして、免疫を獲得していきます。母親からもらった免疫力が衰える5〜6ヵ月頃から感染症を起こし始めるわけです。

 ただし、水痘(みずぼうそう)、突発性発疹症、単純ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、EBウイルス感染症などヘルペス属のウイルス感染は母親から完全な免疫をもらえないので生まれてすぐから感染します。黄色ぶどう球菌、溶血連鎖状球菌などの細菌やクラミジアなどの病原体も生後すぐから感染します。したがって、環境中のさまざまな病原体を経験して乗り越えていくことができる1歳になるまでの間は、周りの子供たちとは隔離された状況で、母親を中心とした少数の人たちと一緒に育つ方が望ましいのです。集団保育をする場合もできれば他の1歳以上の子供たちとは一定の距離が必要です。

 保育所などに通い始め、子供の集団に入ると次々に感染症を起こし、そのたびに免疫力をつけていきます。一通り病気をやってしまうとそれからは感染症を起こしにくくなります。子供たちの感染症は季節があるので1年間はさまざまな感染症を起こし、次の年からは病気を起こしにくくなります。ただし、あまりに短期間に多くの感染症を起こしてしまうと極端に抵抗力が落ちて病気が重症化することがあります。そんな時は、集団保育を休むことも必要でしょう。子供の集団が小さいほど、感染を起こす頻度は減り、ゆっくりと時間をかけて感染症を起こし乗り越えていくことができます。

 家庭の中や保育所などの子供の集団の中で、誰か一人感染症の子がいた場合に慌ててその子を隔離したとしても、感染症の予防はできません。

感染症が周囲に感染する時期
病原体の吸入・接触→潜伏期→発病→回復
                周囲への感染

 病気とわかる直前が一番感染力は強くなるため、病気とわかった時はすでに周りに病原体をばらまいてしまっているからです。そんな時は、心配をしても仕方がありません。潜伏期(病原体をもらってから病気として始まるまでの期間)の後に病気になるつもりで覚悟をきめ、無理をせずに体力を温存しておいて下さい。もし、潜伏期を過ぎても病気にならなかったら感染を免れたことになります。

 子供たちは母親からもらった免疫という大事なプレゼントを使い切った後、今度は自分の力で環境中のさまざまな微生物に立ち向かって力をつけていき、大人になっていきます。

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