アレルギーっ子の生活

<07-01      2001年11月16日(金)公開>

【アトピー性皮膚炎の治療】

 アトピー性皮膚炎は痒みが強いため、掻きむしって出血し、血だらけになることがあります。夜はよく眠れず、落着いて遊んだりすることができず、いらいらした落着きのない性格になることがあります。なるべく、強い副腎皮質ステロイド剤を使用しなくてもよくなるように、また、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の進行をくい止めるためにも、食事や住環境・生活環境を改善しましょう。

 アトピー性皮膚炎の病状は、生まれて2〜3ヵ月の頃、顔から始まり、徐々に胸、手足、背中と広がっていく赤いぽつぽつした発疹から始まり、赤く腫れた皮膚、掻きむしって傷ついた皮膚、黄色い液が出てジクジクしただれた皮膚、カサカサし粉を吹いたような皮膚など多彩です。多くの子が生後2〜3ヵ月に診断されます。または、それ以後突然始まることもあります。大人では就職時、結婚時、出産後などに突然始まることもあります。

 アトピー性皮膚炎の人たちを見ていると一定の悪くなっていく道筋が見えてきます。何らかのアレルギー原因物質や化学物質を食べる、触る、吸い込むなどにとって接触し、赤く腫れた、または過敏になって痒みが増した皮膚を、ボロボロになるまで鋭く伸びた爪で掻きむしってしまいます。ボロボロなった皮膚には細菌やカビ・ウイルスが感染します。感染してさらに腫れて赤くなり、痒みがひどくなった皮膚を、また掻きむしります。皮膚についた細菌・カビ・ウイルスは爪に付着し、その爪で他の場所を掻き、掻いた場所に新たな感染を起こします。そして、全身にアトピー性皮膚炎は広がっていきます。

 アトピー性皮膚炎を起こした場所は荒廃し、他のアレルギー原因物質から体を守ることができず、アレルギーもその種類と強さが広がっていきます。この悪循環を食い止める必要があります。

アトピー性皮膚炎の治療は以下の3本の柱からなりたっています。

1)原因療法(アトビー性皮膚炎の原因を取り除く)
2)体調や皮膚の状態を良好に保つこと
3)病院での治療(ステロイド剤や抗アレルギー剤・漢方薬など)

1)原因療法

 年齢が小さい場合(特に乳児)、アトピ一性皮膚炎の原因は食物から始まります。卵・牛乳・小麦・魚・ピーナッツ・ゴマ・大豆のアレルギーが多く、特にパン食を毎日食べている家庭に生まれた赤ちゃんはパン食につきものの、小麦・卵・牛乳・ピーナッツにアレルギーを起こしていることが目立ちます。その他、お母さんが好きで妊娠中によく食べた、そばやゴマ・魚などのアレルギーがよく見られます。これらの食品は赤ちゃんが食べれば症状を起こしますが、食べるだけではなく、触っても、また、敏感な時は焼いた時に出る煙が皮膚に付着してもアトピー性皮膚炎を起こします。お母さんが食べなくても、お父さんのために料理を作った際に卵の成分が胸につき、そのままの格好で赤ちゃんを抱っこすると赤ちゃんのほっぺたは、あっという間に湿疹になってしまいます。

 年齢が高くなるにつれて、ダニやカビ・そばがら・ペットの毛や花粉などにアレルギーを起こすようになり、これらのものが皮膚に接触することによりアトビー性皮膚炎は悪化していきます。原因となっているものを生活環境の中から取り除くと症状は軽減していきます。また、アトピ一性皮膚炎から始まって、気管支喘息やアレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎などの病気を引き起こすことが多いため、環境中のダニ・カビ・そばがら・ペットの毛・花粉などへの対処が同時に必要です。たばこの煙や自動車の排気ガス(特にディーゼル車)、焼却灰、合成洗剤、ホルムアルデヒド、トルエンなどの有機溶剤、農薬、汚染された水や土ボコリなどに対する注意も怠ってはいけません。

 原因療法をきちんとすることで、痒みは軽くなっていきます。

2)体調や皮膚の状態を良好に保つこと

 子供らしい生活リズムをつくりましょう! 夜早く寝て、ぐっすり眠り、朝早く起き、きちんと排便し、きっちりと食べ、よく遊ぶ子供らしい生活リズムを作りだすことにより、からだの調子、特におなかの調子を整えておくことが大切です。

 皮膚が刺激されても湿疹は悪化するため次の様なことに注意して下さい。皮膚が汚れていると、細菌感染やカビ・ウイルスの感染などのため湿疹は悪化します。入浴時には石けん(軽い場合は普通の牛脂や植物性油脂から作られたもので良いでしょう。湿疹がひどい場合は石けんの原材料が体に合わないこともあり、症状なく使える物を探さなければいけません。薬用石けんや香料の入った石けんは刺激が強く使用は避けます。)をよく泡立て、その泡で包むようにしてそっと洗います。ごしごしこすりつける必要はありません。入浴したら、まず最初に汚れた部分をさっとお湯で流してから浴槽に入り、ぬるめのお湯に使って十分に汚れを柔らかくし、その後石けんでそっと洗います。石けんはお湯でよく流して肌に残らないようにします。

 お風呂から出たら、洗いたてのきれいなタオルで体を拭きます。前日に使ったタオルをそのまま洗わずに使うと、昨日皮膚から拭き取った細菌やカビなどが垢をえさに増殖しており、その菌をまた体につけてしまいます。そのために皮膚は感染症が頻発し、アトピー性皮膚炎は悪化します。湯上がりには必ずきれいな洗い立てのタオルを使うようにします。

 柔軟仕上げ剤は衣類に残っていますと汗で溶け出し、皮膚について湿疹を悪化させますので止めましょう。洗濯物はすすぎを充分にし、洗剤(合成洗剤はお奨めできません。石けんでできたもので皮膚にあったものを探します。)が衣類に残らないようにしましょう。下着は清潔な木綿のものを使い、絹・化学繊維・毛糸などは皮膚を刺激するのでなるべく避けること。シッカロールは、細菌のすみかとなり皮膚を刺激するので使わないようにしましょう。

 爪は常に入れをして湿疹を傷つけないようにします。爪で傷つけられた皮膚はすぐ細菌やカビ、ウイルスの感染を起こしてアトピー性皮膚炎を悪化させていきます。

 入浴剤は皮膚に合わないことがあります。使う場合は、皮膚の状態や入浴後の痒みなどをよく観察しながら使って下さい。症状がある場合はすぐ使用を中止します。塩素を除くために、ビタミンC(アスコルビン酸)や緑茶を浴槽に入れることをお奨めします。

3)病院で治療

 現在でている症状を軽くするために抗アレルギー剤や漢方薬や処方されると思いますが、主治医とよく相談して飲むようにしましょう。

 アレルギー体質は治ることがないため、様々な状況下で軽い湿疹は続くことがあります。弱い軟膏の使い方を覚えておく必要があります。軟膏は湿疹がひどい時に1日2回(入浴後と朝)使います。湿疹のところが汚れている時は、きれいに汚れを落としてから軟膏を使います。夜は入浴後、朝もできれば入浴後、または、きれいなぬれタオルで拭くか、超酸性水で消毒してから軟膏を塗ります。軟膏はなるべくうすく伸ばして使いますが、強く擦り込まないようにしましょう。擦りつけると刺激となり、赤み、痒みがひどくなったり、アトピー性皮膚炎が悪化してしまいます。湿疹が盛り上がって表面がでこぼこしている場合は軟膏をたっぷりと塗り、あまった軟膏を拭き取るようにします。湿疹が良くなってきたら、一日1回入浴後に塗るようにします。さらに良くなっってきたら、1日おき、2日おきと回数を減らしていきます。

 使う軟膏は顔に塗って良い弱いものから、体にだけ塗ることができる強いものまで色々あります。処方された時に使い方をよく聞いて正しく使うようにしましょう。当院でステロイド軟膏を使う場合は、短時間で効果がなくなる弱い軟膏を基剤で2〜6倍に薄めて使う場合がほとんどです。基剤は、汗が多く感染が起こりやすい夏は亜鉛化軟膏やサトウザルベ(酸化亜鉛、なたね油、ミツロウからできており細菌の増加を抑える)等を使い、汗を飛ばし、肌を乾燥傾向にさせます。乾燥が強くなる冬は、汗が皮膚に残り、うるおいが出るように、白色ワセリンやユベラなどの軟膏を基剤に使います。

 痒み止めの軟膏が別に出される時があります。痒みの強い時に単独または他の軟膏に混ぜて使います。オイラックスは塗ると皮膚が熱くなり多少の痛みを感じることがありますが、爪で皮膚を掻いた時と同じ感覚を持ちます。爪で掻き壊すよりオイラックスを塗ることで我慢できるようにすると、皮膚の損傷が軽くなります。

4)掻きむしることを止めるには

 痒いところを掻くことは非常に気持ちが良いことです。この快感を止めるためには代わりの快感がないと止められないようです。生活の中で楽しいこと、掻いている時に思い出して幸せな気持ちになれる何かを作りましょう。また、掻いている時は気持ちが放心状態となり、自分では制御できなくなっています。そんな時は、「掻いているよ」と声をかけてあげて下さい。自分で掻いていることを気づき、「掻くこと止めるとアトピー性皮膚炎は治っていく」という自覚がでてくると、アトピー性皮膚炎は軽くなっていきます。痒みをいかに抑えるか、および、皮膚を掻いて皮膚を壊し細菌やカビ・ウイルスの感染を起こすことをいかに抑えられるかがアトピー性皮膚炎治療の最大の鍵です。

 体の中で痒みを起こさせている化学物質は、リノール酸など油脂から作られます。油脂の食べ方を変えると、痒みが減っていきます。掻くことを止めようとしても、痒みがあまりに強い場合は抑えることができません。油脂の食べ方を変えて、痒みを軽くすることが、掻きむしりを止めるためには必要です。また、油脂の食べ方が悪いと、精神的にも「暴走」してしまい、掻きむしりを止めるための理性のコントロールもできなくなります

 痒みは、食べ方を良くして(原因となる食品の対処、および、油脂の食べ方を変えること)、周囲の生活環境を改善することで軽くなります。

5)取り組む時の心がまえ

 焦らずに、じっくりと落ち着いて取り組みましょう。色々なことを実現していく過程で好ましい心の状態と親子関係ができあがっていきます。子育てを楽しみながらアレルギーを起こしにくい、痒みが軽くなる食・住環境を作りあげていきましょう。相談できる友達を作り、情報交換しながら取り組まれることをお奨めします。

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