アレルギーっ子の生活

<05-07      2001年10月13日(火)公開>

【アレルギーっ子の運動】

 ヒトが哺乳動物として生活能力を高く持ち続けるためにも、適度な運動は必要です。特に、気管支喘息を発症すると、毎日の適度な運動は肺の働きを強くするため運動をすることが奨められます。問題はどんな運動を毎日の生活の中にどのように組み込んでいくかということです。

 運動は、毎日続けられるものが望ましく、楽しみながらできると長続きします。運動の種類としては、ほこりや花粉・カビ・動物の毛等に注意しながら行なえれば、何でも構わないのです。運動する時間帯、施設、その子のアレルギーの状態、好みなどをよく考えて決めて下さい。

 水泳は運動中に吸い込む空気が水面のすぐ上のため湿度が高く、気管支を刺激しにくいため、喘息に良いと言われています。しかし、水泳教室に通っても、週一回だけでは効果は期待できません。もし、週一回の教室に通う場合は、その他の週6日の運動も考えて下さい。

 水泳は良いことばかりではありません。プールの水に含まれる消毒剤、塩素の濃度が濃いと揮発する塩素を吸い込んで喘息発作を起こしたり、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、中耳炎を悪化させることもあります。プールの水の浄化方法にもよりますから、事前に調べておくと良いでしょう。水を循環ろ過するような機械がなく、塩素を使って浄化するプールはかなり水が汚れています。もし、水泳を始めた症状がひどくなった場合には、続けるかどうか考え直して下さい。

 アトピー性皮膚炎の場合、塩素の濃いプールの水を体につけたまま直射日光に当たると、皮膚が炎症を起こし湿疹が悪化します。屋外で水泳をする場合には、プールから上がったらプールの水を拭き取り、体にタオルをかけて日光が当たらないようにしましょう。プールに入る前の消毒槽での塩素消毒によって湿疹が悪化することがあります。泳ぐ前にはシャワーで汚れをとって下さい。泳ぎ終わった後は、シャワーやきれいなお湯で体を流します。必要なら軟膏を塗ります。

 屋外のプールの場合、近くの杉林や野原などから飛んできた花粉や枯れ葉などがプールの水に入り、それらの草木にアレルギーがあると、プールに入るだけで皮膚炎の悪化を起こすことがあります。そんな場合は、プールに入ること事体を考えなければいけません。近くにある田畑に散布された農薬がプールの水に溶け込み、皮膚炎を起こすこともあります。

 年齢が小さい場合、特に小学校入学前の子供では、どこかの施設に通って運動をするよりも、友達をつくって元気に遊びまわることで体力はつきます。良い友達と遊べる広場をどこかに見つけましょう。

 布団の掃除機がけを運動に利用しましょう。朝起きたら、朝食前にフトンに掃除機をかけると、毎日続けられるかなり良い運動になります。ジョギングするよりも、雨が降っても雪が降っても毎日できるフトンの掃除機がけは運動不足のお父さんにぴったり。アレルギー対策にもなるし、一石二鳥の運動です。子供たちも付き合えば、最高です。立ち上がった姿勢だけでなく、延長管を短くし、ひざをついて両手で布団用ノズルを持って体を伸ばしてかけたりすると色々な筋肉を使うことができます。

☆運動誘発性喘息☆

 「運動をすることで気管支喘息の発作を起こすこと」を言います。運動をするたびに発作を起こす場合は、適切に対応しないと急にひどい発作を起こし重症化することもあります。

 もし、前の日や当日の朝に発作があった場合は、見かけ上何でもなさそうでも、運動で発作を起こしやすくなっています。具合が悪くなったら無理をせず、すぐに運動を中止し、休むようにします。

 ウォーミングアップなしで急に激しい運動を始めると発作を起こしやすくなります。予防するためには、十分に準備体操をして徐々に運動を強くしていくようにします。小さい子供の場合は、急に走りはじめるとせき込み、発作につながることがあります。

 暖かいところから急に寒い屋外に出ると、寒冷刺激によって発作が起きやすくなり、運動が加わると発作になります。この場合は、徐々に寒い場所に移動して行けば良いのですがなかなかそうはいきません。簡単にできる方法は、寒い屋外に出たら、口元を両手でお椀をつくって覆い、自分の吐き出した暖かい息をもう一度吸い込みながら、徐々に寒さに慣れていくことです。または、マスクを使っても同じ効果があります。

 どうしても、運動で発作を起こしてしまう場合は、運動直前にインタール吸入等の薬を使用することもあります。罹り付けのお医者さんに相談して下さい。

☆食物依存性運動誘発性アナフィラキシー☆

 「アレルギーがある食品を食べた後に運動をすることでアナフィラキシーを起こすこと」を言います。嘔吐・激しい咳・呼吸困難・じんましんから始まる全身の発赤やむくみ・激しい頭痛・血圧の低下・意識の喪失などが起こるアナフィラキシーというアレルギーの病気の中では最悪の状態です。アレルギー体質がある人では誰もが、ある時突然起こっても不思議ではありません。パンやフライ(パン粉を使用)、ラーメンなど小麦製品が原因のことが多く、次にエビなどの魚介類に見られます。ほとんど症例はアレルギーがあることを知らずに食べて運動してしまって初回のアナフィラキシーを経験しますが、原因と対処がわかった後は起こさなくなります。運動する前に食べない、食べたら運動しないことが唯一の予防法になります。アナフィラキシーを起こしてしまったら、速やかに救急処置をおこない、早めに医療機関を受診することが大切です。アナフィラキシーを起こした場合、絶対に一人にしないようにします。いつ病状が急変するかもしれないので、必ず、誰かが病状を見守るようにします。以前、アレルギーの原因物質を学校で食べて具合が悪くなったため、一人で帰宅途中に道端で倒れ、発見されたときは手後れだった例があります。このような不幸な出来事は避けたいものです。

 すでに食物アレルギーの原因となる食物がわかっている場合は予防ができます。起こりうる症状が予測されているため、間違って食べてしまっても早急に対策をとることができます。事前に食物アレルギーのあることがわかっていない場合は、重篤な症状に進展する可能性があります。

 学校で運動誘発性アナフィラキシーを予防するためには、給食後や調理実習後の体育には注意し、できればその時間に体育を入れないように時間割を組む、体育はなるべく午前中の遅い時間帯、昼前に行なう、部活では朝食直後の激しい練習は避けるなどの対策が必要です。

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