アレルギーっ子の生活

<04-23      2001年06月26日(火)公開>

【歯から見たヒトの食べるべきもの】

 みなさんは、恐竜のこと、多少はご存知でしょう。子供たちには大人気ですからね。恐竜が何を食べていたか?爪などからもわかるのですが、草食だったか肉食だったかは、何で決まるか知っていますか?歯です。肉食恐竜の歯は鋭くとがり、捕まえた獲物の体を切り裂けるようになっています。草食恐竜の場合は葉を引き裂くナイフのような門歯と、植物の固い殻をすりつぶせるように臼状になった臼歯からできています。

 人間が化石となり、未来の知的な生物たちに発掘されたとしましょう。未来の地球の支配者たちはヒトの食べ物をどう推測するでしょうか?おそらく、その歯の形から、「このヒトという生物は植物を食べる草食の生き物だったのであろう」と答えをだすでしょう。動物たちはその動物の体に合った食べ物を食べられるように歯の形が出来上がっています。

ヒトの歯から食性を考えてみると…… 自分の口を大きく開けて、鏡で見てください。ヒトの歯は永久歯で32本(乳歯で20本)あります。奥の臼歯は穀物をすりつぶすための歯で上下とも5対20本前歯(切歯)は野菜をかみ切るための歯で上下2対づつ8本犬歯(糸切り歯)は繊維の多いもの(例えば、サトウキビとか肉とか)を引き裂くための歯で上下1対づつ4本あります。その歯がもっている働きに合わせて食べることをおすすめしています。つまり、ヒトは臼歯:切歯:犬歯=米や麦などの穀物:野菜や海草:繊維の多い固い野菜または肉・魚=20本:8本:4本=5:2:1となります。みなさんは献立を考えるとき、まず、今日は肉にしようか魚にしようか考えてから、付け合わせの野菜を、そして最後に主食となるものを考えることが多いと思いますが、ヒトの食性(歯の構造)から考えると、まず穀物を、そして野菜を考え、最後に肉や魚を考えたほうがよいと思われます。ヒトは誕生してから、穀物や木の実からエネルギーを得て生存発展してきました。一番多い臼歯は穀物をすりつぶし栄養とするための歯です。米は、粒のままたべられ、おいしく効率よくエネルギーを獲得できる人類史上最高の穀物と思われます。アレルギーは、動物が耐えられない悪い環境におかれたときに、体を守るために起こす生態防御反応です。ご飯を食べる量が少なく、毎朝パン食という家庭に生まれた赤ちゃんは小麦・牛乳・卵・ピーナッツとパン食に関係した食べ物にアレルギーを起こしてしまいます米をきちんと食べ、野菜の汁物や煮物をきちんと食べることでアレルギーは軽くなっていきますヒトは、哺乳動物としてのヒトの体に合った食べかたをすることで、ヒトの持っている能力を最大限発揮できるのではないのでしょうか。

 霊長類は高等なほど草食性−霊長類の進化と食性の変化の模式図ヒトはもともと草食の生き物だという証拠がもう一つあります。霊長類つまりサルの仲間をご存知ですね。動物園に行くと、猿山の日本猿だけでなく、キツネザルや、リスザル、チンパンジーなど様々なサルの仲間を見ることができます。ツパイなど下等な霊長類は昆虫や小動物など肉食中心ですが、ヒヒやチンパンジーなど高等な霊長類になるほど植物中心の草食になっていきます。つまり、進化した霊長類は草食になる道筋を歩んでいるわけです。ヒトの次に高等な霊長類であるゴリラは100%草食の動物です。森のヒト、ゴリラのあの巨体は植物を食べて出来上がっています。森の中で森の植物たちと共存し平和に暮らしているのです。5月の連休に子ども達を連れて動物園に行ってきました。ゴリラのオリの後ろに「ゴリラの1日の食べ物」展示コーナーがあります。様々な植物性の食べ物に混ざって、卵と牛乳がおいてありました。もちろん森の中でそんなものが食べられるわけはありません。「ん!?」と思っていると、親子連れで来ていたお母さんがいいました。「ほら見てごらん、○○ちゃん、ゴリラも卵をたべて牛乳も飲むんだねー、○○ちゃんと同じだね」。この展示は「(動物園での)ゴリラの1日の食べ物」であって、ゴリラの自然での食べ物展示ではないのです。動物園は自然の中で生きる動物を見れない人間のために人間界に連れて来られた動物を飼育する場所です。動物園に来た人間が野生のゴリラを知り、絶滅から守るためにはゴリラの自然の状態を伝えて欲しいと思います。

 ヒトは自らの生活場所を寒い高緯度の地域に広げるにつれ、生存のエネルギー得るために火を利用した肉食を拡大し、他種の動物の母乳までも利用しなければなりませんでした。その分が肉食になっているのではないのでしょうか?(例えば、ヨーロッパやモンゴルなど狩猟や牧畜を中心に生活してきたヒトたち)。ゴリラよりさらに高等なヒトは動物学的に考えると、本来なら100%草食のはずですが…。

 動物は進化することによって植物を食べられるように、さまざまな仕組みを体の中につくります。自分では消化できない草を腸内細菌の助けによって消化・吸収する牛や馬の仲間、小石を飲み込み胃の中で草をすりつぶすために使う鳥の仲間(恐竜でもみつかっています)など。食物連鎖を飛び越えて、直接植物を食べられる生物は獲物の多少に頼ることなく、植物の存在だけで生き延びるすべを獲得し、生存の可能性を広げています。ヒトの植物食は生存に優位のはずですが…。

 さらには、肉食ではえさを確保するために大量の穀物つまり広大な農地を必要なこと、飼育する過程での屎尿による汚染などによって地球環境を悪化させますが、大地から芽生えた植物を直接食べることは、地球環境を守ることにつながります。

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